で下さい。如何に私それを喜ぶ。私死にましたの知らせ、要りません。若し人が尋ねましたならば、はああれは先頃なくなりました。それでよいです』
 私は『そのような哀れな話して下さるな、そのような事決してないです』と申しますと、へルンは『これは常談でないです。心からの話。真面目の事です』と力をこめて、申しまして、それから『仕方がない』と安心したように申しまして、静かにしていました。
 ところが数分たちまして痛みが消えました。『私行水をして見たい』と申しました。冷水でとの事で湯殿に参りまして水行水を致しました。
 痛みはすっかりよくなりまして『奇妙です、私今十分よきです』と申しまして『ママさん、病、私から行きました。ウイスキー少し如何ですか』と申しますから、私は心臓病にウイスキー、よくなかろうと心配致しましたが、大丈夫と申しますから『少し心配です。しかし大層欲しいならば水を割って上げましょう』と申しまして、与えました。コップに口をつけまして『私もう死にません』と云って、大層私を安心させました。この時、このような痛みが数日前に始めてあった事を話しました。それから『少し休みましょう』と申しまして、書
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