け[#「きっかけ」に傍点]に玄関の死体が台所へ舞いもどった次第を当事者自身のあなたの口から白状していただこうと思ったのです。その点だけがはっきりしないためにこの事件の予審調書が今までできあがらなかったようなわけです。もちろん、今日調書を発表したというのはうそで、あれは、わたしのいうことをあなたに信じていただくための手段だったのです。」
 宵闇《よいやみ》の迫った室内にぱっと百|燭《しょく》の電燈がついて、客と主人との顔が急に明るく浮び上った。そして二人の心は顔よりももっと明るかったのである。



底本:「新青年傑作選第一巻(新装版)」立風書房
   1991(平成3)年6月10日第1刷発行
初出:「新青年」
   1926(大正15)年1月
入力:川山隆
校正:noriko saito
2007年8月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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