。一方が成立するか両方ともとも倒れになつて、より包括的な説明に代られるかのいづれかである。
ところが、文学の目的の進化の場合はさうでない。文学が、発生のそも/\のはじめから今日に至るまで唯一の目的しかもつてゐないとするのは却つて純然たる独断であつて、何物もそれが必然であることを説明してゐない。却つて、文学はすべての人間の所産と同じく進化してゆくものであること、そして文学の進化は同時に文学の目的そのものゝ進化ともなることこそ、事実がそれを呈示し、理論の統一性がこれを要求してゐるのである。それ故に、私たちは、今日の階級的文学が闘争を生命とする事実を否認するために文学の目的は闘争でないといふ独断論をつくり出す必要もなければ、またこれを是認するために、文学はそも/\闘争的であつたといふ牽強附会な理論を急造する必要もないのである。[#地から1字上げ](一九二七・三、新潮)
底本:「平林初之輔文藝評論全集 上巻」文泉堂書店
1975(昭和50)年5月1日発行
※「ゝ」「ゞ」の使い方で疑問に思える箇所がありますが、底本通りとしました。
入力:田中亨吾
校正:小林繁雄
2004年3月22日作成
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