反對である。私は文學作品の政治的價値を正しく認識するために、そしてその重要性を立證するために、先ずこれを藝術的價値から引きはなすのである。若しこれを一しよくたにして「社會的價値」という風呂敷の中にひつくるめてしまうことができるならば、プロレタリア文學とかマルクス主義文學とかいうものの特殊性は消滅してしまわねばならぬ。
 プロレタリア文學若しくはその別名或はその一部分としてのマルクス主義文學は、政治的規定を與えられた文學である。政治のヘゲモニイのもとにたつ文學である。この事實はあいまいにごまかしたり、糊塗したりしてはならない。藝術や文學から出發して、マルクス主義文學、プロレタリア文學を合理化しようとする企圖はきれいさつぱりと抛棄されねばならぬ。マルクス主義は藝術や文學を社會の現象として解釋することはできるが、藝術や文學はマルクス主義から命令され規定されて、政治的鬪爭の用具となる約束を少しももつていないからである。プロレタリア文學若しくはマルクス主義文學のみがそれをもつているに過ぎないのである。プロレタリア文學は藝術の立場ではなくて政治の立場から、文學論からではなくて政治論から出發してのみ
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