で、私は、相変らず、こののぞみのない弁論をして見る気でいるのだ。今村をたすけるためではなくただ自分の職業として。
私が瀬川と二人で、人間の過誤の犠牲となった今村のことなどは忘れて、よい気持になってその晩酒をのんで別れた。瀬川もそんなことは少しも気にしていないような様子で陽気に唄をうたったりした。海は、何事にも無関心で、千古のままの波を岸に寄せているらしかった。
[#地付き](一九二六年五月)
底本:「「新青年」傑作選 幻の探偵雑誌10」光文社文庫、光文社
2002(平成14)年2月20日初版1刷発行
初出:「新青年」博文館
1926(大正15)年5月号
入力:川山隆
校正:noriko saito
2009年3月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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