ルギーが腦髓のために費される。このやうな人間學は極めて徐々に理性人間の人間學を破つて、哲學の方面ではとりわけ近代の自然主義的及び實證主義的傾向のうちにおいてその基礎として承認されるに到つた。我々はいまこのやうな人間學を根柢としてゐる認識理論に注意を向けよう。
 先づプラグマティズム(pragmatism)について述べておかう。プラグマティズムは主としてアメリカの哲學であつて、ジェームズがその代表的理論家である。イギリスのシラーのいはゆるヒューマニズムなどもこの傾向に屬してゐる。プラグマティズムといふ言葉は、ギリシア語のプラグマ即ち行動を意味する言葉から派生されたものであつて、ひとつの觀念或ひは理論の眞理性を、その論理的歸結によつてではなく、その實踐的歸結(practical consequences)によつて判定しようとする思想である。世界は一であるか多であるか、決定されてゐるか自由であるか、物質であるか精神であるか。このやうな形而上學的問題についての論爭は終結することなく絶えず繰り返されてゐる。プラグマティズムはかくの如き場合そのおのおのの觀念をそれぞれの實際上の效果を跡づけることに
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