の同一を説くことによつてそれらの諸點を極端にまで押し進めたのである。ヘーゲルは理性の歴史を超越する恒常性を否定した。理性そのものが歴史を有し、歴史において發展する。理性は動かぬものでなく、却つて運動と變化がその本質に屬してゐる。これは理性人間の人間學の内部における極めて重要な、決して見遁してはならぬ變革である。歴史の概念がここにおいて最も強力な基礎の上におかれることとなつた。
 第二の人間學即ち制作人間の人間學は、比較的新しい誕生のものである。ダーウィンの種の變化の學説がこれに對して顯著な影響を與へたと見ることができる。この人間學は人間と動物との間に本質的な差別を認めない。人間もひとつの特殊な動物の種類であつて、兩者の間には單に程度上の差異があるに過ぎない。人間のうちには他の一切の生物におけると同樣の諸要素、諸力、諸法則がはたらき、ただ一層複雜な組織形態をとつてゐるまでである。理性といはれるものもなんら形而上學的根源のものではない。それはなんら自律的な法則性ではなく、すでに類人猿においても見出される高等な心理作用の一層發達したものであつて、技術的知性(technische Intell
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