た。自然科学の認識目的が法則であるに反し、歴史学の認識目的は法則でなくて個性であるといわれる。ヴィンデルバントは自然科学と歴史学との区別を論じて、自然科学が法則定立的であるに反し、歴史学は個性記述的であると述べている。個性というのは個人のことばかりでなく、社会にしても文化にしても個性をもっている。すべて歴史的なものは個性的である。自然科学においては個々の特殊的なものは一般法則の例としてそのもとに包摂される。しかるに個性は一般法則の例に過ぎぬようなものでなく、それぞれ他に換えることのできぬ独自性を具えている。また自然現象は繰返すと考えられるに反し、歴史的なものは一回的なものである。更に自然科学が対象を意味とか価値とかから離れて取扱うに反して、歴史的なものはすべて意味とか価値とかに関係して考えられる。生理学の対象としては仮に天才と狂人とは同じであるとしても、文化価値に関係させて見れば全く違い、天才は芸術的価値というが如き文化価値の見地から歴史学の対象となるが、狂人はそうでない。かような個性は法則に対して何かといえば、形であると一般に答えることができる。すべて歴史的なものは形をもっている。こ
前へ 次へ
全224ページ中129ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三木 清 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング