はまさに「知性的徳」として人間の生活の最高の形態であり、この徳に至るためには段階的に「倫理的徳」即ち魂の非理性的な部分に対する理性的部分の支配と秩序付けが前提されるのである。中世のキリスト教的哲学が、最高の認識は神の認識であるとする立場において、知識の倫理を重んじたことはいうまでもない。認識の道徳的条件が考えられ、真の認識に達するためには一定の徳が必要とされ、禁欲等の道徳的行為が勧められた。神の認識そのものが直ちに道徳的意味をもっていたのである。かようにして古代及び中世の哲学者たちは、認識の道徳的制約について絶えず語っている。
 その際最もしばしば愛と認識との関係が問題にされた。そして主知主義的なギリシア哲学では愛は根本において認識に依存的な機能であったのに反し、キリスト教では認識に対する愛の優位が説かれた。この差異は、前者においては、愛は真の存在に対する非存在的存在の、自己自身は愛することのないイデアに対する人間の、希求を意味したのに対し、後者においては、愛は根本においてより高いものがより低いものに、神が人間に降りてくること、身を卑しめることを意味したところから理解されるであろう。愛の優位の思想はアウグスティヌスによって心理学と認識論のうちに展開された。すべての知的作用及びそれに属する形象並びに意味内容は、最も単純な感性知覚から最も複雑な表象や思惟の構成物に至るまで、単に外的対象及びそれに由来する感官刺戟に結び付けられているのでなく、そのほかに、関心をもつという作用及びこれに規定された注意作用に、そして究極は愛憎の作用に本質的に必然的に結び付けられている。この作用は、アウグスティヌスにとって、既にあらかじめ意識に与えられた感覚内容、知覚内容等に単に附け加わってくるに過ぎぬものではない。或るものへの関心、或るものに対する愛は最も根源的な作用であり、一般に我々の精神が可能なる対象を把捉するあらゆる他の作用を土台付ける作用である。かようにして先ず、或るものについて関心をもつことがなければ、そのもののいかなる感覚も、表象も存在することができぬ。次に客観的に知覚され得る対象の範囲からそれぞれの場合に事実上何が我々の知覚に入ってくるかの選択は、その対象に対する我々の関心、従って愛によって導かれる。即ち我々の表象や知覚の方向は我々の愛憎の方向に従うのである。更に対象が我々の意識に現われる直観や意味充実作用の高昇は対象に対する我々の関心や愛の高昇に依存する結果である。「ひとは愛するもののほか知らない、知識がより深く、より完全になるべきであるならば、愛、いな激情は、より強く、より烈しく、より活発にならねばならぬ」、とゲーテも書いている。しかしかような見解は、認識を主観化し人間化してしまうことになりはしないであろうか。アウグスティヌスは彼の心理学に彼の創造説並びに啓示説と結び付いた存在論的基礎を与えている。愛と関心によって、例えばすでに単純な知覚の如き知的作用のうちに形象が現われるということは、彼に依ると、ただ出来上った対象のうちに侵入する認識主観の活動であるのでなく、却って同時に対象そのものがそれに応じて答えること、対象が自己を与えること、自己を顕わにすること、即ち対象の自己啓示である。それはいわば愛の問に対して世界が答えることであり、これによって世界は自己を開示してその完全な存在と価値に達するのである。かくてアウグスティヌスにとって世界の「自然的」認識は、その対象的制約の側から見れば、ひとつの啓示の性格をもっている。この「自然的啓示」は究極においては永遠の愛であるところの神のひとつの啓示である。すべての主観的な作用が愛によって土台付けられているのみでなく、認識された物そのものもこの愛に応える自己啓示において初めてその完全な存在と価値に達するのである。そこでアウグスティヌスは、例えば植物は人間から見られ、見られることにおいてその特殊的な、自己に閉じ込められた存在からいわば救済されるという傾向性をもっていると語っている。マルブランシュは関心や注意を「魂の自然的な祈り」と呼んだ。この場合にも祈りという言葉は、主観的な人間精神の活動の意味のみでなく、関心と愛をもって見られた対象の自己開示のうちに存する答を一緒に体験することを含んでいる。そこでパスカルは、「愛と理性とは同じものである」、といっている。
 しかるにかように知識の倫理が問題になるのは、そこに求められた知識が、マックス・シェーレルの区別に従えば、救済の知識ないし教養の知識であって、仕事の知識でないためであるといわれるであろう。シェーレルは、コントが人知は神学的段階から形而上学的段階へ、更に実証的段階へと順次に進歩してきたと考えたのに反対し、宗教的・神学的認識(救済の知識)、形而上学的・哲学
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