義をしていられるようにいわれている。日本でもマルクス主義に対する弾圧が激しくなった頃多くの人が芸術論に逃れたことのあったのを私は想い起し、ハイデッゲル教授の現在の心境を察し、一般に哲学と政治との関係について考えさせられるのである。
 マールブルクのハイデッゲル教授の書斎で私の目に留ったのはもう一つ、室の中央にあった教会の説教机に似て立ちながら本を読んだりものを書いたりすることのできる高い机である。あんな机が欲しいものだと時々想い出すのであるが、私はいまだそれを造らないでいる。



底本:「読書と人生」新潮文庫、新潮社
   1974(昭和49)年10月30日発行
   1986(昭和61)年9月30日20刷
初出:「読書と人生」
   1939(昭和14)年1月
入力:Juki
校正:小林繁雄
2010年1月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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