会に多大の補助を与えおった。かと思えば、『断頭台《ラギュイヨチーン》[ルビの「ラギュイヨチーン」は底本では「ラギュイヨケーン」]』の如き国家主義の新聞をも後援しおった。それで双方共怨みはないはずじゃのに、ヴァランタンさんはとうとうばく発してしもうてな、あの富豪の命を取ろうと決心してさすが大探偵らしい手段を取るに至ったわけですがな。彼は犯罪学上の研究に資せんがためとか何とかいう理由で、かの処刑されたベッケルの首を持帰った。それから食後、ブレインさんを相手に最初の議論をしてそれはガロエイ卿も最後まではその議論を聞かれなんだが、それに負けて、相手を密閉室のような奥庭へ誘い込んだ上で、撃剣術の話をして、軍刀と樹の枝を実地に使用して見せて、それから――」
イワンがいきなり跳上った。
「この狂人《きちがい》ッ」と彼は大喝した。「サア御主人様の所へ行《ゆ》け、たとえ貴様をひっ掴んでも連れて行《ゆ》くから――」
「待て待て、わしはそこへ行《ゆ》こうと思うとるところじゃ」とブラウンは平然としていった、「わしはあの方に白状してもらわにゃならん、それで事ずみじゃ」
一同は気の毒なブラウンを人質か犠牲《い
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