見よう。建築材料は、既に天然の材料を使わずに多くの人工的材料を使用するに到った。木造建築以外の建築は殆んど人工材料のみで建造され、然も、それら人工材料は天然の石材に比較して遥かに廉価であり、且堅牢である。こうした発達の趨勢《すうせい》は無限に存在しているのであって、従って、只、同様に長石類を研究することに依って、より以上に廉価なる材料が発見されようとしてさえいる現状である。それが完成された暁、我々の社会生活は一体どうなるだろうか。私たちがアメリカからの通信をラヂオで受けとるであろうように科学の進歩は、同時に、一坪十円の建築費で出来上る家屋を人類に提供して呉れるであろうことは、決して想像に難くはないのである。
又、世界屈指の生産品として有名な、台湾の天然生産品である樟脳は、ようやく独逸の科学的生産品である樟脳にその市場を圧倒されようとしているのである。
これら、その他無数の例は、すべて決して空想ではないのだ。否、今や空想ではなくなって来たのである。人工的生産品が天然品を圧迫して、私たちの生活に侵入しはじめたのは近々二十年来のことである。こうした無限の科学的発明が現実化されて、私たちの
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