な方法において彼の推定はかなり正しくあったよ。彼の他の推定のようにな」
「誰れの推察ですか? 誰れが正しかったのですか?」と焦慮の不意な熱心を以て夫人が叫んだ。「あなたが話しておられるのは誰れの事なのですか? あなたの『彼』やそして『彼を』にむずむずさせられずに、私達はやり通せませんか?」
「わしは殺人者について話してますのじゃ」と師父ブラウンが言った。
「何んな殺人者ですか?」彼女は鋭く訊ねた。「あなたはあのお気の毒な教授は殺されたとおっしゃるのですか?」
「左様」ターラントは彼の髯の中でがさつに言った、「吾々は『殺害された』という事は出来んですよ、なぜなら吾々は彼の人が殺されたのを知りませんからな」
「人殺しは他の誰かを殺したのですぞ、それはスメール教授ではないのじゃ」と坊さんはまじめ気に言った。
「まあなぜ、他に誰れを殺しましたか?」と他の者が言った。
「彼はダルハムの牧師である、尊敬すべきジョン・ウォルター氏を殺ろしたのじゃ」とブラウンは気むずかし気に言った。「彼はそれ等の二人を殺ろしたかったのじゃ、なぜなら彼等二人ともある珍らしい型の聖宝を持っておったからじゃ。殺人者はその点において狂人の一種じゃったな」
「それは凡て大変奇妙に思われるな」ターラントがつぶやいた。「もちろん僕等は牧師はほんとに死んだかどうかを誓う事は出来んですよ。吾等は彼の死骸を見ないんですからな」
「大きに言われる通りじゃ」ブラウンが言った。
そこには銅羅の打撃の様に急な沈黙があった。その沈黙において夫人の内に非常に正確に活動した心の奥底の当推量がほとんど叫び声を上げんばかりに彼女を動かした。
「それはたしかにあんたが見られたものじゃ」と坊さんは話し続けた。「あんたは彼の死骸を見られたはずじゃ。あんたはほんとに生きてる、彼を見なかったのじゃ。しかしあんたは彼の死骸は見られたはずじゃ。君は四本の大きな蝋燭の光りでそれをよく見たのですぞ、そしてそれは海中に自殺的に投げられていなかったじゃ。が十字軍の前に建った寺院にある教会の王子のような風に横たわっておったのじゃ」
「簡単に言いますと」ターラントが言った、「あなたはあのミイラにした死骸はほんとに殺された人の死骸であったと吾々に信ぜよと言われるのですね」
師父ブラウンは一瞬間黙っていた。それから彼は無頓着な態度で言った。
「それについてわし
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