士として、武術家として、立派に働きもしたし、考えもした。誰かが――いいや、妻だけでも、あいつだけは、知ってくれる。それでもいい――)
 半兵衛は、灰色の中に、自分と妻と二人ぎりの所を見た。

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 附記 伊賀越の仇討は、荒木方四人、又五郎方士分、小者ともで、合せて十一人と、藤堂家の公文書「累世記事」にも残っているし、その外俗書にも、同じであるが、一竜斎貞山(二代目)が、附人を三十六人にして、これが当って以来、すっかり、この方が一般的になってしまった。この桜井半兵衛の如き、二十三歳で、立派な武士だが、本当に紹介されていないのは、遺憾である。この時、荒木が斬ったのは、河合甚左衛門と、この桜井半兵衛との二人だけである。
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底本:「直木三十五作品集」文藝春秋
   1989(平成元)年2月15日第1刷発行
入力:門田裕志、小林繁雄
校正:鈴木厚司
2006年10月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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