ずぐずしておった。で見るまに村に急を告げ、警官を同道し、二人の敵が永遠に連行《つれゆ》かれるのを見て、うまくいったとにこつきながら飯を食いおった次第じゃよ。」[#「」」は底本では欠落]
「フン、彼奴《きゃつ》めあんなに笑いやがるとは」とフランボーは、身慄いしながら云った。「でも師父、全体そんなに大それた智慧は悪魔からでも借りて来たものでしょうか」
「その智慧は君から借用したんじゃ」
「エエ、私からですって」
「そうじゃ、あの手紙の文句に何んとあった、「[#「「」は底本では欠落]貴下が探偵をまきて見当違いの逮捕をなさしむる手腕に至りては」とある。これは君は犯罪的偉勲に対する讃辞であったんじゃ、フランボー君、あの先生は全く君の手を応用したんではなかったろうか、腹背両面に敵をうけながら、自分だけサッと体を開いて、前後の二人を衝突させ、そして殺合いをさせたんじゃなかったか。」[#「。」」は底本では「、」]折しもほの白い、暁空にも似た光が、夜空に流れて、草間がくれの月が次第に蒼白く輝き出た。二人は沈黙にふけりつつ流れを下った。「マー師父」と突然フランボーが呼びかけた。
「何んだかこうまるで夢のよ
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