て公《こう》に奉じ、金を守るにもっぱらなる資本家も喜んで軍事公債に応じ、挙国一致、千載一遇《せんざいいちぐう》の壮挙は着々として実行されている。新聞紙上には日ごとに壮烈なる最後をとげた士官や、勇敢なる偉勲《いくん》を奏した一兵士の記事をもって満たされ、それにつづいて各地方の団隊の熱心なる忠君愛国の状態が見るように記されてある。「自分も体《からだ》が丈夫ならば――三年前の検査に戊《ぼ》種などという憐むべき資格でなかったならば、満洲の野に、わが同胞とともに、銃を取り剣をふるって、わずかながらも国家のためにつくすことができたであろうに」などと思うことも一度や二度ではなかった。かれはまた第二軍の写真班の一員として従軍した原杏花《はらきょうか》の従軍記のこのごろ「日露戦争実記」に出始めたのを喜んで読んだ。恋愛を書き、少女を描《えが》き、空想を生命とした作者が、あるいは砲煙《ほうえん》のみなぎる野に、あるいは死屍《しし》の横たわれる塹壕《ざんごう》に、あるいは機関砲のすさまじく鳴る丘の上に、そのさまざまの感情と情景を叙《じょ》した筆は、少なくともかれの想像をそこにつれて行くのに十分であった。三年前
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