直にすませ、満足に事務を取り、温かき晩餐《ばんさん》ののち、その日の新聞をよみ終はりて、さて一日の反省になんらもだゆることなく、安息すべき明日の日曜を思へば、テニスの運動の影響とて、右手の筋肉の筆《ふで》とるにふるへるのほかたえて平和ならざるなし」と書いた。また「Mの都合あれば帰宅したけれど思いとまる。節約の結果三銭の刻《きざ》み煙草《たばこ》四日を保《たも》つ」と書いた。しかしかれは夜眠られなくって困った。眠ったと思うとすぐ夢におそわれる。たいていは恐ろしい人に追いかけられるとか刀で斬られるとかする夢で、眼がさめると、ぐっしょり寝汗をかいている。心持ちの悪いことはたとえようがなかった。
中学校々友会の会報が年二季に来た。同窓の友の消息がおぼろ気ながらこれによって知られる。アメリカに行ったものもあれば、北海道に行ったものもある。今季《こんき》の会報には寄宿舎生徒松本なにがしがみずから棄てて自殺した顛末《てんまつ》が書いてあった。深夜、ピストルの音がして人々が驚いてはせ寄ったことがくわしく記してあった。かれは今まで思ったことのない「死」について考えた。夜はその夢を見た。寄宿舎の窓に灯が
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