してしまうという。しかたがないから、夜は鍵《かぎ》をかけておく。こうそこにつとめていた人が話した。かれは心にほほえみながら歩いた。
だるまやもそこに一二軒はあった。昼間はいやに蒼《あお》い顔をした女がだらしのないふうをして店に出ているが、夜になると、それがみんなおつくりをして、見違ったようにきれいな女になって、客を対手《あいて》にキャッキャッと騒いでいる。だんだん夏が来て、その店の前の棚《たな》の下には縁台が置かれて、夕顔の花が薄暮《はくぼ》の中にはっきりときわだって見える。
「貴郎《あなた》、どうしたんですよ、このごろは」
「だッてしかたがない、忙しいからナア」
「ちゃんと種《たね》は上がってるよ、そんなこと言ったッて」
「種があるなら上げるさ」
「憎らしい、ほんとうに浮気者!」
ピシャリと女が男の肩を打った。
「痛い! ばかめ」
と男が打ちかえそうとする。女は打たれまいとする。男の手と女の腕とが互いにからみあう。女は体《からだ》を斜めにして、足を縁台の外に伸ばすと、赤い蹴出《けだ》しと白い腿《もも》のあたりとが見えた。
清三はそうしたそばを見ぬようにして通った。
夜はこと
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