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一月一日。(三十五年)
これは三年の前、小畑と優《ゆう》なる歌《うた》記《しる》さんと企《くわだ》てて綴《つづ》りたるが、その白きままにて今日まで捨てられたるを取り出でて、今年の日記書きて行く。
□去年、それもまだ昨日、終《つい》に世のかくてかかるよと思ひ定めては、またも胸の乱れて口やかましく情《なさけ》とくすべも知らず。草深き里に一人住み、一人|自《みず》から高うせんに如《し》かじ。かくては意気なしと友の笑はんも知らねど、とてもかからねばならぬわが世の運命、それに逆《さから》はん勇なきにはさらさらあらねど、二十余年めぐみ深き母の歎きに、ままよ二年三年はかくてありともくやしからじと思へばこそよ。さてかく行かんとする今年の日記よ、言はじ、ただ世にかしこかれよ、ただ平和なれよ。終《つい》にただ無言なれよ。
□恋は遂《つい》に苦しきもの、われ今またこれを捨つるもくやしからじ。加藤のそれ、かれの心事《しんじ》、懐《ふところ》に剣をかくすを知らぬにあらねど、争はんはさすがにうしろめたく、さらばとてかれもまたかかる人とは思ひ捨てんこそ世にかしこかるべし。
□今日始めて
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