は何うしたら好いかわからなくなるのだから。それは母者はよう見舞うて呉れるけれども、本當に私の心を知つてゐて呉れるのはお前ばかりだからね。……田舍も戀ひしいだらうけども……』
『勿體ない……』
 呉葉は別な意味でまた涙組ましい心持になつて行つた。主從と名には呼ばれてゐるけれども、同胞にも劣らないやうな窕子の平生のいつくしみがそこにありありとくり返されて來た。
『その中にはお前にだつて好いこともあるだらうし……、あのやうな殿でも、今に一の人にならぬとも限らぬし……』
 呉葉は言ひかけた窕子を遮つて、
『もう、もう、そのやうなことは仰有らずにゐて下さいまし……。この身は初めからさう思つて此處に參つて居るのでございますから……。この身は一生お傍は離れないつもりで居りますほどに……。ただ藤の母親に逢つて、あちらのことをきいたりしたので、田舍がこひしうなつたのですけれども、それは深く思うてゐるわけでもござりませぬほどに……』
『ほんに、さうしてお呉れ……。お前なしでは、とてもこの世の中の心の荒波はわたつて行けないのだから。……とても……とても……』
 窕子も袖を面にあてた。
『本當に心安うおぼせ―
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