たであらうなどと思ひつゝ歸つて來たことをくり返した。それに、かの女はいつもその裏の方から入つて行くのが例になつてゐたので、そこの竹むらに薄く夕日のさし込んで來てゐるさまなどをもはつきりと知つてゐた。それだけその話は一層かの女の心を惹いた。
『それに、もつと困ることがあるのよ……』
聲をはづませて窕子は眼を大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]るやうにした。
『…………』
『あの卿の君も始終あそこから入つて行くのだからね……』
『まア……』
『何でも殿の話では、それが一つにならぬとは限らぬといふのだから……』
『それは本當でございますか?』
『殿がさう言はれるのだから、まさかつくりごとでもあるまい……』
『さやうでございますね』
『殿はのんきなことを言つて居られたけれども、登子の君がさぞお困りになつてゐらつしやるだらうと思つて、それを考へると、お氣の毒で……』
『本當でございますねえ』
『それにつけても、つくづく女子といふものほどはかないものはないと思うた……』
『そのやうなことはございませぬけれど……』
『登子の君が何んなに困つてゐられるかと思うて……。それも普通のことなら
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