が持つて來た水をいきなりその顏へと吐きかけた。『窕子! 窕子! しつかりしなくてはいけない、窕子! 窕子!』と叫んだ。窕子はかをるの膝に身をもたらせて、解けた髮を半ば亂したまゝ、全く喪心したもののやうにぐたりとなつてゐた。長能は猶ほしきりに水を顏の面にかけた。
『窕子!』
父親の聲がはじめてその耳に入つたやうに見えた。窕子は薄く薄く眼を開いた。『オ、窕子さん、氣がつきましたか! しつかりしなくつちやいけませんよ。あなたは、大切な人なんですよ、ね、窕子さん!』とかをるは叫んだ。呉葉は唯オドオドしてゐた。
『本當にしつかりしてくれ……。まだこの身がゐるのぢやから……。のう、この身より先に世を早くしては不孝ぢや……。それはそなたの悲しみはわかるが……そなたにもしものことがあつては――』父親は窕子の顏を覗くやうに言つた。窕子はかをるや呉葉たちの手で、やがて別な靜かなところの方へとつれて行つて寢かされ、た。窕子はまだ本當にその意識を恢復したとは言はれないやうにして、眼をぱつちりとは明けてはゐるが、時々痙攣するやうにその手や口を震はせた。呉葉は布を水に浸してそれをその額の上に置いた。
その話を
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