「袖萩《そではぎ》」の
肩《かた》に小袖《こそで》をうちかけて
涙《なみだ》ながらの 芝居事《しばゐごと》
「寒《さむ》かろうとて着《き》せまする」
このまあつもる雪《ゆき》わいの。
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折鶴《をりづる》
行灯《あんど》のかげにとつおいつ
娘《むすめ》ごころの羞《はつか》しや
何《なん》と答《こたへ》もしら紙《かみ》の
膝《ひざ》のうへにて鶴《つる》を折《を》る。
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青《あを》い窓《まど》
隣《となり》のとなさん、何処《どこ》へいた。
向《むか》ふのお山《やま》へ花摘《はなつ》みに
露草《つゆくさ》 つら/\月見草《つきみぐさ》。
一|枝《えだ》折《お》れば、ぱっと散《ち》る
二|枝《えだ》折《お》れば、ぱっと散《ち》る
三|枝《えだ》がさきに日《ひ》が暮《く》れて
東《ひがし》の紺屋《こうや》へ宿《やど》とろか、
南《みなみ》の紺屋《こうや》へ宿《やど》とろか。
東《ひがし》の紺屋《こうや》は赤《あか》い窓《まど》、
南《みなみ》の紺屋《こうや》は青《あを》い窓《まど》。
南《みなみ》の紺屋《こうや》へ宿《やど》とれば、
夜着《よぎ》は短《みぢ》かし夜《よ》は長《なが》し。
うつら/\とするうちに
青《あを》い窓《まど》から夜《よ》があけた。
底本:「桜咲く島 春のかはたれ」洛陽堂
1912(明治45)年2月24日発行
※近代デジタルライブラリー(http://kindai.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記を新字にあらためました。
※文中の「…」は底本では1文字あたり4点ないしは5点の点線ですが、文字の幅に合わせた「…」で代用しました。
※歴史的仮名遣いから外れたものも、底本通り入力しました。
※促音「っ」の小書きの混在は底本のままとしました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:土屋隆
校正:田中敬三
2005年8月22日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作に
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