二郎《じろう》さんは、大急ぎで家《うち》へ飛んで帰りました。二郎さんの綿入をぬっていらした母さんにいいました。
「サンタクロスに手紙をかいてよ、かあさん」
「なんですって、この子は」
「ピストルと、靴と、洋服と、ほしいや」
「まあ、何を言っているの」
「みっちゃんとこのかあさんも手紙をかいて、サンタクロスにやったって、人形だの、リボンだの、ハーモニカだの、ねえかあさん、ぼく、ピストルとサーベルと、ね……」
「それはね二郎さん、お隣のお家には煙突があるからサンタクロスのお爺《じい》さんが来るのです」
「でもいったよ、みっちゃんのかあさんがね、煙突がないとこは天窓がいいんだって」
「まあ。それじゃお手紙をかいてみましょうね。坊や」
「嬉《うれ》しいな。ぼくピストルにラッパもほしいや」
「そんなにたくさん、よくばる子には、下さらないかも知れませんよ」
「だってぼく、ラッパもほしいんだもの」
「でもね、サンタクロスのお爺様は、世界中の子供に贈物をなさるんだから、一人の子供が欲ばったら貰《もら》えない子供ができると悪いでしょう」
「じゃあぼく一つでいいや、ラッパ。ねえかあさん」
「そうそう二
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