のちさの木に
  雀《すゞめ》が三羽とうまつて
  一羽の雀がいふことにや
  ゆうべござつた花嫁御《はなよめご》
  なにがかなしゆてお泣きやるぞ
  おなきやるぞ‥‥‥

ゆうべの芝居のその唄《うた》が
いまのわが身につまされて
ほろりほろりとないてゆく。
[#改丁、挿し絵入る、145]
[#改丁]

 異国の春

につぽんムスメのなつかしさ
牡丹《ぼたん》芍薬《しやくやく》やま桜《ざくら》
金襴緞子《きんらんどんす》のオビしめて
ふりのたもとのキモノきて
丹塗《にぬり》のポクリねもかろく
からこんからことゆきやるゆえ
どこへゆきやるときいたらば
娘《むすめ》ざかりぢや花ぢやもの
後生《ごしやう》よいよに寺《てら》まゐり。
寺まゐり。
[#改ページ]

 白壁へ

ふたりはかきぬ。
「しらぬこと」

ふたりはかきぬ。
「よろこび」と

ふたりはかきぬ。
「さよなら」と。



底本:「どんたく」中公文庫、中央公論社
   1993(平成5)年7月10日初版発行
底本の親本:「どんたく」実業之日本社
   1913(大正2)年11月初版発行
入力:星夕子
校正:Juki
2000年10月12日公開
青空文庫作成ファイル:
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