何か不思議なものに打たれて、真剣な心持ちになつてきました。
それはその眼のためではありません。自然のポーズでもありません。私は黙つて見てゐられなくなつて、窓の外から「お光ちやん」と呼びかけました。その娘は、お光といふ名でした。
お光は、びつくりして振り返つて、親愛の心持をみんなその眼に集めたやうな眼ざしで私の方を見ながら立上りました。そして例の「まあ」を言つたものです。
あの、ちらと影をさして、すぐ消えていつた瞬間の美しさは、その二週間に、こつこつと描きあげた作品の中には、たうとう捕へることが出来ませんでした。
底本:「日本の名随筆40 顔」作品社
1986(昭和61)年2月25日第1刷発行
1989(平成元)年10月31日第7刷発行
底本の親本:「砂がき」ノーベル書房
1975(昭和50)年2月
入力:渡邉 つよし
校正:門田裕志
2002年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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