の高峯が、まるで帽子でもかぶつたやうに灰いろの雲に蔽はれて聳え立つ姿を見たとき彼は全身をブルブルと顫はせた。ところが、馬は容赦なくぐんぐん駈けて、すでに山麓へとかかつた。と、叢雲がぱつと吹き払はれて、彼の目の前には、くだんの騎士が、いとも荘重に姿を現はした……。彼は馬を停めようとして激しく轡を曳き緊めたが、馬は異様な嘶き声をあげ、鬣《たてがみ》を逆立てて遮二無二、騎士を目がけて突進して行つた。すると、それまで身じろぎ一つしなかつた騎士が、その時むくむくと動き出すと同時に、かつと両眼を見開き、自分の方へ驀進して来る魔法使を眺めて笑ひ出した。それを見ると魔法使は全身が凍《い》てついてしまふやうに感じた。百雷のやうな哄笑が山々にこだまして、彼の胸を打ち、身内を震駭させた。彼は、まるで、誰か頑丈な人間が、自分の体内を歩きまはりながら、掛矢で心臓や脈管を打ちまくるやうに感じた……それほど怖ろしく、この笑ひ声が彼の内心に響いたのだ!
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カニョーフ キエフスカヤ県カニョーフ郡の首都で、ドニェープルの河港。
チェルカースイ キエフスカヤ県チェルカースイ郡の首都
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