る決心をした。ところで、その有力な人物の職掌が何で、どんな役目についていたか、そのへんのことは今日までわかっていない。ただこの有力な人物も、つい最近に有力者になったばかりで、それまではいっこう無力な人間にすぎなかったということを知っておく必要がある。といったところで、彼の現在の地位にしても、更に重要な地位と比較すれば、大して有力なものとはいえなかったのである。しかし、いつの世にも、他人の目から見ればいっこう重要でもなんでもない地位を自分ではさもたいそうらしく思いこんでいる連中があるものである。ところで、彼はさまざまな手段を弄して、自分の偉さを強調しようと努めていた。たとえば、自分が登庁する際には下僚に階段まで出迎えさせることにしたり、誰にも自分の前へじかに出頭するようなことは許さず、恐ろしく厳格な順序を踏んで、まず十四等官は十二等官に報告し、十二等官は九等官なり、または他の適当な役人に取次ぐという具合にして、最後にやっと用件が彼のところへ到達するようにしていたのである。これはもう聖なるロシアにおいてはあらゆるものが模倣に感染している証左で、猫も杓子も自分の長官の猿真似をしているのである
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