わす。
間抜め、おいらの邪魔するよりは、
とつととすつこめ墓場の中へ!
さあさ、あいつの口髭ひつぱり
首根つこひつぱたいて、房髪《チューブ》をむしれ!
[#ここで字下げ終わり]

「なかなか巧え歌ぢやごわせんか!」と、蒸溜人《こして》は少し横へ頭をかしげながら、その大胆不敵な所行に呆れ果てて棒立ちになつてゐる村長の方へ向きなほつて、言つた。「なかなか面白い! だが、村長さんのことをあしざまに詠みこんだ点だけは怪しからん……。」
 それから彼は、再び両手を卓子のうへに載せると、その眼に一種甘美な情緒を湛へたまま、なほも聴耳を※[#「奇+攴」、第3水準1−85−9]てたが、窓の下では笑ひ声と共に※[#始め二重括弧、1−2−54]さあ、もう一度! もう一度!※[#終わり二重括弧、1−2−55]といふ叫び声が聞えてゐた。ところで、少し目端のきく人ならば、村長が決して驚愕のあまりその場にじつと立ち竦んでゐたのでないことに直ぐ気がついたであらう。ちやうどこんな風に、老獪な猫は世なれぬ※[#「鼬」の「由」に代えて「奚」、第4水準2−94−69]鼠《はつかねずみ》に自分の尻尾のまはりを勝手に跳ねまはら
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