、背の高い陶器師《すゑものし》が、自分の商品の後ろからのろのろしたあしどりで歩みながら、絶えず、伊達者《だてしや》で蓮葉な陶器どもに、いやがる乾草をかぶせかぶせするのを、羨ましさうに眺めやつた。
一方、少し離れて、麦の袋や苧や麻布や、その他いろんな自家製《うちでき》の品を満載した荷車を、へとへとに疲れた去勢牛に曳かせながら、その後ろから小ざつぱりした麻布《あさ》の襯衣《ルバーシュカ》に、汚れた麻布《あさ》の*寛袴《シャロワールイ》を穿いた持主がのつそりのつそり歩いてゐた。彼は、その浅黒い顔から玉をなして流れ、あまつさへ長い泥鰌髭のさきからぽたぽた滴り落ちる汗を、ものうげな手つきで拭き拭き歩をはこんでゐるが、その髭は、幾千年このかた美醜の別ちなくあらゆる人の子をば招かれもせぬのに訪づれる、あの容赦なき調髪師の手で髪白粉《かみおしろい》をふりかけられてゐた。それと並んで、おとなしさうな、年とつた一頭の牝馬が荷車に繋がれてポカポカ歩いてゆく。行きずりの人、とりわけ、たいていな若者が、この百姓と行き交ふ度ごとに必らず帽子をとつた。だが、それはこの親爺の白毛髭のせゐでもなければ、その勿体ぶつた
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