ゐた。
「御覧よ、オスタップ」と、私が兄に対つて、「ほら、またあすこへ運送が来たよ!」
「どこへ運送が来ただ?」と、祖父は、ひよつと若い衆連に取つて食はれるやうなことのないやうにと、大きい甜瓜に記号《しるし》をしながら、きき咎めた。
 街道を、正に、荷馬車が六台ほどつながつてやつて来る。先頭に立つたのは、もう髭に胡麻塩のまじつた運送屋だ。それが、さうだ、ものの十|歩《あし》ばかり前まで来たところで、ピタリと足を停めてしまつた。
「やあ、御機嫌さんで、マクシム! 不思議なところでお目にかかるもんだね!」
 祖父は眼をぱちくりさせて、「ああ! 御機嫌さん、御機嫌さん! いつたい、どちらから来なすつた? ボリャーチカもをるぢやないか? 御機嫌さん、御機嫌さん、兄弟! おや、これはどうぢや! みんながいつしよぢやないか、クルトゥイシチェンコも! ペチェルイツィヤも! コヴェリョークも! ステツィコも! みんな、御機嫌さん! あつはつはつ! おつほつほ!」
 そして一同は接吻しあつたものだ。
 去勢牛《きんぬき》どもは軛を外して草を食まされ、荷物は道路においてけぼりにされた。そして一同は番小舎の
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