らう! それに帽子はソローハの家へ置いて来てしまつたし。ままよ、娘つ子が橇で運んでくれるのに委せることだ――さう彼は考へたのである。
ところが、事態はチューブの全く予期せぬ結果になつた。ちやうど娘たちが橇を取りに駈け去つたのと同じ時刻に、痩《やせ》つぽの教父《クーム》が、いやに取り乱した、不機嫌な顔をして酒場から出て来た。酒場の女主人が頑として彼に貸売を承知しなかつたためだ。彼はひよつと誰か信心深い貴族でも来あはせて一杯振舞つて呉れるまで、じつと酒場で待つてゐようかとも思つたが、折悪しく、申しあはせたやうに貴族といふ貴族がみんな我が家に居残つて、堅気な基督教徒らしく、てんでの家族といつしよに蜜飯《クチャ》を食つてゐた訳だ。教父《クーム》は酒商売をしてゐる猶太女の汚ない根性と木石のやうな情《つれ》なさを忌々しく思ひながら、とぼとぼと歩いてゐたが、はたと袋につまづいて、びつくりして立ちどまつた。※[#始め二重括弧、1−2−54]はて、誰だかえれえ袋を道のまんなかに放つて行きをつたぞ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、四方から仔細に眺め※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しなが
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