。そればかりか、ギジャコルペンコといふ若者が、彼女のお尻に女の使ふ紡錘《つむ》くらゐの大きさの尻尾のあるのを見ただの、まだつい先々週の木曜日のこと、彼女が黒い猫に化けて道を走つて行つただの、コンドゥラート神父の梵妻《おだいこく》のうちへ豚の姿で飛び込んで雄鶏《とり》の鳴き声をあげておいて、神父の帽子を頭にかぶりざま、もと来た方へ駈け去つただのと……。
偶々さうした噂話で婆さん連が井戸端会議を開いてゐるところへ、牛飼のトゥイミーシュ・コロスチャーウイといふ男が来合はせたことがあつた。彼はすかさずこんな話を持ちだした。なんでも夏のことで、*聖彼得斎節《ペトロフキ》の前だつたが、彼が牛小舎の中で一と眠りしようと思つて、藁を掻き寄せたのを枕にして横になつてゐると、現在その眼にまざまざと、※[#「髟/梏のつくり」、36−11]《もとどり》を振り乱した、肌着ひとつの妖女《ウェーヂマ》が牛の乳を搾りだしたのが見えるのだけれど、彼は身動き一つすることも出来ない――呪術《まじなひ》にかけられてしまつてゐたのだ。そして何か、いやに胸の悪くなるやうな物を口に塗りたくられたので、その後で一日ぢゆう、唾ばかり
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