、ワクーラが言つた。「これこそ、女帝がほんとにお穿きになる靴なんだぜ。」
「いいえ、いいえ! あたし靴なんか要らないの!」と、彼女は両手を振りながら、男の顔から眼も離さずにつづけた。「そんな、靴なんかなくつたつて、あたし……。」それだけ言つて、あとは言ひ得ず、彼女はぽつと赤くなつた。
鍛冶屋が間近く進みよつて彼女の手を執ると、美女は眼を伏せた。つひぞこれまでに、彼女がこんなに美しく見えたことはなかつた。恍惚となつて鍛冶屋がそつと彼女に接吻すると、彼女の顔はひときはぱつと赧らんで、一段とまた美しくなつた。
* * *
ある時、今は亡き僧正猊下がディカーニカを通られた折、この村の土地柄を褒められたが、往還を馬車で通り過ぎながら、急に一軒の新らしい民家の前で車を停めて、
「この美しく彩色《いろど》つた家はいつたい誰の家ぢやの?」と猊下は、戸口の傍に嬰児《みどりご》を抱いて佇んでゐた美しい女に訊ねられた。
「鍛冶屋のワクーラの住ひでございます!」と、お辞儀をしながら、オクサーナ(それは他ならぬ彼女であつた)が、それに答へた。
「見事ぢや! あ
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