ても差閊えないものであろうかと、私は嘆き、悲しみ、憤りました。だが、いずれにしても、こうした事実はお互のために極めて判然とさせなければならないと考えまして、それ以来あらためて自分の手でいろいろ調査をしてみました。そして到頭、今朝になって、その動かすべからざる調査の結果を知り得たのです……」
「え! なんでございますって※[#疑問符感嘆符、1−8−77] それでは、あなたは、もしや……」女優は感激のあまり頭を抑えて立ち上がりました。「若しや……あなたがそのお兄さんではないのですか?……」
「そう、そう……ですけれども、ああ、それが、それが……」青年はすっかり胸をつまらせて、息苦しそうにどもりました。
「まあ!――」女優は、いきなり青年の肩をしっかりとかき抱いて、幾度も幾度も接吻しながらさて小さい声で囁くようにこういいました。「まあ!――嘘吐き! あんたって人はなんて嘘吐きなの! あたしには、兄さんなんて、厄介な者はたった一人だってありゃしなくってよ!……」
 青年は抱かれながら、おろおろ声で弁解しました。
「だって僕は、――僕のいおうとしたのは、その調査の結果が、やっぱり僕とあなたとは兄
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