てもらふ事と話しがきまつて二人で夜中に出かける。「西光寺サンてどんな人だい」、「それは、とても、エライ[#「エライ」に傍点]坊さんだよ、マアあつて見給へ」……之は後日話しなれ共北朗出発する時曰く、西光寺の和尚さんはエライ人だなあメツタ[#「メツタ」に傍点]に見た事が無い云々……これから西光寺さんと、井上家とを訪問して(一二君上阪中にて留守)帰つて庵で寝る、此の間に西光寺さんから北朗のために上等の布団が持つて来てあつたので、北朗全くホクホク物でその布団のなかにはいつて寝た。……今夜の庵の賑かなことかな、但之も亦五日後[#「亦五日後」に白丸傍点]にはモト[#「モト」に傍点]の静寂の庵に帰らなければならない、イヤ[#「イヤ」に傍点]そんな事思ふまい思ふまい。
日日是好日[#「日日是好日」に傍点]の筈では無いか、……放哉もいつしか寝込んでしまふ。扨これから北朗五日[#「五日」に傍点]庵に居たのだけれ共、今書かうと思つても書くことが無い、不思議なことだが、なんにも無いやうな気がする、マトマツタ[#「マトマツタ」に傍点]事がなんにも無い、只馬鹿な顔をして、二人でゴタ/\[#「ゴタ/\」に傍点]してニコ/\[#「ニコ/\」に傍点]して居たものと見える、第一、放哉も北朗も、ソレ程意気込んで居た句が一句[#「一句」に白丸傍点]も出来なんだことを以つて見ても、たゞ、ボンヤリ[#「ボンヤリ」に傍点]して喜んで居たことが解ると思ふ。中津の同人、丁哉氏が送つて来てくれた、小供が三人で蟹に小便かけて居る絵を壁にはり付けて放哉が毎日見て喜んで居るのだが、之を二人で眺めては、只五日間と云ふものニコ/\[#「ニコ/\」に傍点]、ゴタ/\[#「ゴタ/\」に傍点]、して居たものと見える、強ひて個条書きにでもして見れば、次のやうな事があつたやうに思ふ。――
△北朗、毎朝お経をあげてくれて、放哉大に感銘せしこと、そして北朗の読経中々うまくなつたこと。
△北朗の朝寝坊と寒がりとには、放哉あきれながら成る程/\と思へり、それは、女房を持つてる奴は贅沢だなあ……と云ふこと。
△北朗一日寒霞渓に至りおみやげに紅葉の枝をもつて帰る、それが甚だ汚ない紅葉、放哉未だ寒霞渓を知らず、其の紅葉を活けてながめて居ること。
△北朗、放哉の手の黒いのを見て(垢で)如何に女に近づかぬからとてアンマリ[#「アンマリ」に傍点]
前へ
次へ
全5ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング