高み[#「高み」に傍点]でありまして、そこには、島人の石塔が、白々と無数に林立してをります。そして、どれも、これも皆勿体ない程立派な石塔であります。申す迄も無く、島から出る好い石が、皆これ等の石塔に作られるのです。そして、雨に、風に、月に、いつも黙々として立ち並んでをります。墓地は、秋の虫達にとつては此上もないよい遊び場所なのでありますが、已に肌寒い風の今日此頃となりましては、殆ど死に絶えたのか、美しい其声もきく事が出来ません。只々、いつ迄もしんかん[#「しんかん」に傍点]として居る墓原。これ等無数に立ち並んで居る石塔も、地の下に死んで居る人間と同じやうに、みんなが死んで立つて居るのであります。地の底も死、地の上も死……。あゝ、私は早く庵にかへつて、私のなつかしい石ツころ[#「石ツころ」に傍点]を早く拾ひあげて見ることに致しませう、生きて居る石ツころ[#「石ツころ」に傍点]を――。
[#改ページ]
風
市中甚だ遠からねば、杖頭に銭をかけて物を買ふ足の労を要せず、而も、市中又甚だ近からねば、窓底に枕を支へて夢を求むる耳静なり。それ、巣居して風を知り、穴居して雨を知る……
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