ろがつて居る小さな、つまらない石ツころ[#「石ツころ」に傍点]に向つて、たまらない一種のなつかし味を感じて居るのであります。たまたま、足駄の前歯で蹴とばされて、何処へ行つてしまつたか、見えなくなつてしまつた石ツころ[#「石ツころ」に傍点]、又蹴りそこなつて、ヒヨコン[#「ヒヨコン」に傍点]とそこらにころがつて行つて黙つて居る石ツころ[#「石ツころ」に傍点]、なんて可愛い者ではありませんか。なんで、こんなつまらない石ッころに深い愛惜を感じて居るのでせうか。つまり、考へて見ると、蹴られても、踏まれても何とされても、いつでも黙々としてだまつて居る……其辺にありはしないでせうか。いや、石は、物が云へないから、黙つて居るより外にしかた[#「しかた」に傍点]がないでせうよ。そんなら、物の云へない石は死んで居るのでせうか、私にはどうもさう思へない。反対に、すべての石は生きて居ると思ふのです。石は生きて居る。どんな小さな石ツころ[#「石ツころ」に傍点]でも、立派に脈を打つて生きて居るのであります。石は生きて居るが故に、その沈黙は益※[#二の字点、1−2−22]意味の深いものとなつて行くのであります。よ
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