つながりて
この あしたの空につたはりくる
きえがての思ひ うごきぬ
ともしびの
たわわなる ゆれのごとくに
悲しみは去らず
かなしみは かなたへ去らず
日影のごとく うつろへど
はてしなき いのちのなかに たそがるる
水に浮く花
みづのなかに うかべる花
こゑをはなてり
あをきまぼろし
かぎりなく ひろごりゆく
あをき手のまぼろし
あをき手のまぼろし
げにもさみしき
あをきまぼろし
うつつなき 花をうがちて
こころむなしく しらべをおとす
小鳥の如き溜息
ほのほは あをき水にぬれ
かたちを消して
そことなく みだれつつあり
ああ しろき小鳥のごとき溜息は
時の彼方《かなた》に たたずめり
千鳥ぞ啼けり
わが胸に 千鳥ぞ啼けり
このゆふぐれに
きみのけはひの ちかければ
ふたたび見むことを
ああ
ふたたび汝《なれ》を見むことを
せちにねがへり
かの秋の日の
芙蓉に似たるすがたをば
ふたたび われにみせよかし
ながあめに ぬれてうなだるる しだり花かも
かよわなる 汝《な》がおもだちよ
みづいろあをの かほばせよ
ふたたび汝《なれ》をみむことを
過ぐるもの
あたたかき 秋の日のゆふべなり
こころは 石のうへにすわりて
とどめがたきものの すぐるをききわけつ
おもてをふせて
掌《て》のなかに 夢をゑがきぬ
しろき夢を
ひとつの花
こずゑのうへに
ひとつの花あり
そのいろは あはくして
ひかりのごとく
地にむかひて うなだれたり
春のあをさに
ひらかざる 花のおもわに身をなげて
このながながし 病気《いたつき》の
なやみの刺《とげ》をぬぎすてむ
薄氷《うすらひ》の溶くる春のあをさに
白き芥子の花
わがおもひのいづみ
かのひとは しろき芥子《けし》の花のごとく
ひとすぢの みちのうへにうかべり
はてしなきゆふべの つながりきたる
ひとすぢの
いとほそき みちのうへに にほひつつあり
さびしさ
みしらざる にほひの花よ
いづこにありや
ついばみの鳥 あらざるまへに
みしらざる にほひの花よ
真実
汝がほのかなる ことのはを
われはきく
もゆる火のごとく
形なき影をもとめて
かたちなき かげをもとめて
さだめなく 暮るるならむか
みちのべに 雨
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