Bドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]は忝《かたじけな》しとて涙を流しつ。
 ドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]はわが日ごろ書き棄てたる反古《ほご》あまた取り出でゝ、客に示しゝに、客は我頬を撫で、小きサルワトル・ロオザ[#「サルワトル・ロオザ」に傍線](名高き畫工)よと讚め稱へぬ。媼。まことに宣《のたま》ふ如し。穉きものゝ業《わざ》としては、珍しくは候はずや。それ/\の形明に備はりたり。この水牛を見給へ。この舟を見給へ。こはまた我等の住める小家なり。こは我姿を寫したるなり。鉛筆なれば、色こそ異なれ、わが姿のその儘ならずや。又我に向ひて、何にもあれ、この御方に歌ひて聞せよ。自ら作りて歌ふが好し。この童は長き物語、こまやかなる法話をさへ、歌に作りて歌ひ侍り。年|長《た》けたる僧にも劣らじと覺ゆ。客は我等二人のさまを見て、おもしろがり、我には疾《と》く歌ひて聞せよ、と勸めつ。われは常の如く遠慮なく歌ひぬ。媼は常の如くほめそやしつ。されど其歌をば記憶せず。唯だ聖母、貴き客人、水牛の三つをくりかへしたるをば未だ忘れず。客は默坐して聽きゐたり。媼はそのさまを見て、童の才に驚きて詞なきならんと推し量《はか
前へ 次へ
全674ページ中91ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング