黷ヘ讀み畢りて、ポツジヨ[#「ポツジヨ」に傍線]が滑稽の天性にして、世の人のそを假面《めん》と看做《みな》すことの謬《あやま》れるを信ぜんとせり。さればこそ同じ無稽の巷説は、わがマリア[#「マリア」に傍線]を敬することロオザ[#「ロオザ」に傍線]を敬すると殊ならざるを見ながら、謬りて我をもてマリア[#「マリア」に傍線]に戀するものとなすなれ。
 われは消遣《せうけん》の爲めに市の外廓より出でゝ、武具の辻(ピアツツア、ダルミイ)を過ぎ、拿破崙《ナポレオン》の凱旋塔の下に至りぬ。世のいはゆるセムピオオネ[#「セムピオオネ」に二重傍線]の門(ポルタ、セムピオオネ)とは是なり。塔は猶未だ其工事を終らず、板がこひを繞《めぐ》らして、これに格子戸を裝ひたり。戸より入りて見れば、新に大理石もて彫《ゑ》り成せる大いなる馬二頭地上に据ゑられ、青艸《あをくさ》はほしいまゝに長じて趺石《ふせき》を掩はんと欲す。四邊《あたり》には既に刻める柱頭あり、粗《あら》ごなししたる石塊あり。許多《あまた》の工人は織るが如くに來往せり。
 時に一の旅人ありて我を距《へだた》ること數歩の處に立ち、手簿《しゆぼ》を把《と》り
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