轣tも續きてあらずなり、私は形影相|弔《てう》すとも申すべき身となり候ひぬ。されど年猶|少《わか》く色未だ衰へずして、身には習ひおぼえし技藝あれば、舞臺に上るごとに、萬人の視線一身に萃《あつ》まり、喝采の聲我心を醉はしめて、しばし心の憂さを忘れ候ひぬ。是れまことのアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が最終の一年に候ひき。私はボロニア[#「ボロニア」に二重傍線]に赴《おもむ》く旅路にて、ふと病に染まり候ひぬ。初こそは唯だかりそめの事とおもひ候ひつれ、君に棄てられまつりてよりの、人知れぬ苦痛は、我が病に抗すべき力を奪ひて、一とせが程は頭をだにえ擡《もた》げず候ひき。こゝに君に棄てられぬと書きしをば、許させ給へ。私はその頃、君の猶我身を忘れ給はで、世の人の皆我身を顧みざるに至りて、今一たび我手に接吻し給ふべきをば、夢にだに思得候はざりしなり。二とせの間、劇場にて貯へし金をば、藥餌の料に費《つひや》し盡し候ひぬ。病は※[#「やまいだれ+差」、第4水準2−81−66]《い》えぬれども、聲潰れたれば、身を助くべき藝もあらず、貧しきが上に貧しき境界《きやうがい》に陷いり、空しく七年の月日を過して
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