ゥな。いでや、記念《かたみ》の花の匂へる南國を出でゝ、アペンニノ[#「アペンニノ」に二重傍線]の山を踰《こ》え、雪深き北地に入らん。アルピイ[#「アルピイ」に二重傍線]おろしの寒威は、恰も好し、我が沸《わ》きかへる血を鎭むるならん。いでや浮島のヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に往かん、わたつみの配《つま》てふヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に往かん。神よ、我をして復た羅馬に歸らしむること勿《なか》れ、我記念の墳墓を訪《とぶら》はしむること勿れ。さらば羅馬、さらば故郷《ふるさと》。

   梟首《けうしゆ》

 車は物寂《ものさ》びたるカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の野を走りぬ。サン、ピエトロ[#「サン、ピエトロ」に傍線]の寺塔は丘陵のあなたに隱れぬ。既にして我はモンテ、ソラクテ[#「モンテ、ソラクテ」に二重傍線]の側を過ぎ、山を踰《こ》えてネピ[#「ネピ」に二重傍線]の市《まち》に入りぬ。明月は市の狹き巷《ちまた》を照せり。一僧の酒肆《オステリア》の前に立ちて説法するあり。群衆は活聖《ヰワ、サンタ》マリア[#「マリア」に傍線]の聲に和しつゝ僧に隨ひて去れり。われはこれ
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