B所謂《いはゆる》教育は果して我に何物をか與へし。面從|腹誹《ふくひ》、抑鬱不平、自暴自棄などの惡癖|陋習《ろうしふ》の、我心の底に萌《きざ》しゝより外、又何の效果も無かりしなり。
十の指は我があらゆる暗黒面を指し、却りて我をして我に一光明面なしや否やを思はしめ、我をして自ら己の長を覓《もと》め、自ら己の能を衒《てら》はしめたり。而して彼指は又この影を顧みて自ら喜ぶ情を指して、更に一の暗黒面を得たりとせり。
人々はわが我見《がけん》の強くして固きを難ぜり。政治家のわが我見を責むるは、われ心を政況に委《ゆだ》ねざればなり、馬を愛《め》づる貴公子のわが我見を責むるは、われ馬を品し馬に乘りて居諸《きよしよ》を送ること能はざればなり、曾て又一少年の審美學の書《ふみ》に耽《ふけ》るものありしが、其人は我にいかに思惟し、いかに吟詠し、いかに批評すべきを教へ、一朝わがその授くる所の規矩に遵《したが》はざるを見るに及びては、忽《たちまち》又わが我執《がしふ》を責めたり。こはわが我執あるにはあらで、人々の我執あるにはあらざるか。そを翻《ひるがへ》りてわれ我執ありといふは、わが人の恩蔭を被りたる貧家の
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