チかれぬ。イトリ[#「イトリ」に二重傍線]の狹隘を過ぐる時、われはフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]が上を憶ひ起しつ。旅劵を閲《けみ》する國境には、けふも洞穴の中に山羊の群をなせるあり。されどフエデリゴ[#「フエデリゴ」に傍線]が筆に上りし當時の牧童は見えざりき。
一行はテルラチナ[#「テルラチナ」に二重傍線]に宿りぬ。夜明くれば天氣晴朗なりき。あはれ、美しき海原よ。汝は我を懷抱し我をゆり動かして、我にめでたき夢を見させ、我をかう/″\しきララ[#「ララ」に傍線]に逢はせき。今はわれ汝に別れんとぞすなる。水の天に接する處には、猶エズヰオの山の雄々しき姿見えて、立昇る烟の色は淡き藍色を成し、そのさま清明にして而《しか》も幽微に、譬へば霞を以て顏料となし、かゞやく空の面《おも》に畫ける如し。われは大息《といき》して呼べり。さらば/\、いで我は羅馬に入らん。我墓穴は我を待つこと久し。
われは曾て怪しき媼《おうな》フルヰア[#「フルヰア」に傍線]とさまよひありきし山を望みき。われはジエンツアノ[#「ジエンツアノ」に二重傍線]市を過ぎて、我母の車に觸れてみまかり給ひし廣こうぢを見き。路の傍
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