ツ。その概略《あらまし》は今物書くべき心地もせねば、精《くはし》しき事の顛末をば、羅馬に到り着きて後にこそ告ぐべけれ、手を握らで別れ去ることの心苦しさを察せよといふ程の意《こゝろ》なりき。
 暇乞にとては、何處へも往かざりき。街上にてベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の面を見んことの影護《うしろめた》く、又此地に來てより交を結びし人には、相見んことの願はしくもあらねば、われは旅寓の一室にたれこめて此日を暮さんとおもひ居たり。さるを公子の車を誂へ置きたれば、共に醫師の家訪はずやと宣給ふがことわりなれば、隨ひて行きぬ。小く心安げなる家にて、年|長《た》けたる姉の家政を掌《つかさど》れるあり。質直なる性質眉目の間に現はれて、むかしカムパニア[#「カムパニア」に二重傍線]の野邊にありける時、鞠育《きくいく》の恩を受けしドメニカ[#「ドメニカ」に傍線]に似たるところあり。されど此は教育ある人なれば、起居振舞のみやびやかなる、いろ/\なる藝能ある抔《など》、日を同じうして語るべくもあらざるなるべし。
 翌朝われは先づヱズヰオ[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山を仰ぎ見て別を告げたり。嶺《いたゞき
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