zふに風雨一たび到らば、このわたりは群狗《ぐんく》吠ゆてふ鳴門《なると》(スキルラ)の怪《くわい》の栖《すみか》なるべし。
不毛にして石多きミネルワ[#「ミネルワ」に二重傍線]の岬《みさき》は、眠るが如き潮《うしほ》これを繞《めぐ》れり。いにしへ妙音の女怪の住めりきといふはこゝなり。而してカプリ[#「カプリ」に二重傍線]の風流天地はこれと相對せり。いにしへチベリウス[#「チベリウス」に傍線]帝が奢《おごり》をきはめ情を縱《ほしいまゝ》にし、灣頭より眸を放ちて拿破里《ナポリ》の岸を望みきといふはこゝなり。
舟人は帆を揚げたり。我等は風と波とに送られて、漸くカプリ[#「カプリ」に二重傍線]の島邊に近づきぬ。水のまことの清さ、まことの明《あか》さを知らんと欲せば、この海を見ざるべからず。舷に倚りて水を望めば、一塊の石、一叢の藻、歴々として數ふべく、晴れたる日の空氣といへども、恐らくはこの玲瓏《れいろう》透徹なからんとぞおもはるゝ。
カプリ[#「カプリ」に二重傍線]の島は唯だ一面の近づくべきあるのみ。その他は皆|削《けづ》り成せる斷崖にして、その地勢拿破里に向ひて級を下るが如く、葡萄圃と
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