A去年同じ里の美少年|某《なにがし》と結婚せしこと、その夫は今拿破里にありて明日歸り來るべきこと、二人の子どものあるじの妹にて夫の留守の間來り舍《やど》れることなど、話の裏《うち》より聞き出せり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は二人の小娘に、査列斯《チヤアレス》銀《ぎん》一つ(伊太利名「カルリイノ」約十五錢五厘)與ふべければ薔薇の花束得させよといひて、そを遠ざけ、あるじに迫りて接吻せんとしたり。初めは詞もてさま/″\に誘ひたれどその驗《しるし》なかりき。次には戲《たはぶれ》のやうにもてなして、掻き抱きたれど、女はいち早く擦《す》り脱《ぬ》けたり。終には路易《ルイ》金《きん》一つ(「ルイドオル」と云ふ、約九圓七十八錢)取出し、指もて撮《つま》みて女の前にきらめかし、只だ一たびの接吻を許さば、これをおん身におくるべし、この金あらば、めでたき飾紐《リボン》あまた買はるべし、その黒き髮に映《うつり》好《よ》きものを擇《えら》み試みんは、いかに樂かるべきぞなど、繰返して説き勸めつ。女は我を指して、あちらのおん方は、おん身に比ぶれば※[#「二点しんにょう+向」、第3水準1−92−55]《はる
前へ
次へ
全674ページ中461ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング