A柱尖の僅に露出せるを見、その美を喜びて寫し歸りしより、世の人こゝに注目し、終に棘を刈り土を掘りて、此の宏壯なる柱堂の、新に落《らく》せるものゝ如く、耽古者流の愛《め》で翫《もてあそ》ぶところとなるには至りしなり。圓柱は黄なるトラヱルチイノ[#「トラヱルチイノ」に二重傍線]石もて作られたり。(相待上新しき地層の石にして、石灰分ある温泉の鹽類の凝りて生ずる所なり。)無花果樹《いちじゆく》はその匝《めぐり》に枝さしかはし、野生の葡萄は柱頭迄|攀《よ》ぢ上り、石質の罅隙《かげき》を生じたる處には、菫花の紫と「マチオラ」の紅とを見る。
 我等は倒れたる一圓柱の趺《ふ》の上に踞したり。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]の力に頼りて、乞兒《かたゐ》の群を逐ひ拂ふことを得たりしかば、我等の心靜に四邊《あたり》の風景を玩《もてあそ》ぶには、復た何の妨《さまたげ》もあらざりき。山の姿、海の色、この古神祠の頽敗の状《さま》など、一として我情を動さゞるものなし。公子、今こそは我等がために一篇の即興詩を作《な》すことを辭せざるならめ、と問ひ掛け給へば、夫人も頷きて同じ心を表し給ふ。われは柱を背にして立ち、少
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