オ後、われは猶|※[#「宀かんむり/浸」、第4水準2−8−7]《やゝ》久しく出窓に坐して、外《と》の方《かた》を眺め居たり。こゝよりは啻《たゞ》に廣こうぢの隈々《くま/″\》迄見ゆるのみならず、かのヱズヰオ[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山さへ眞向《まむき》に見えたり。夢の裡《うち》に移り來しにはあらずやと疑はるゝ此境の景色は、われをして容易《たやす》く臥床《ふしど》に上ることを得ざらしめしなり。目の下なる街は漸く靜になりて、燈火《ともしび》の數も亦減ぜり。最早眞夜中過ぎたるなるべし。
 ヱズヰオ[#「ヱズヰオ」に二重傍線]の山の姿は譬《たとへ》ば焔もて畫きたる松柏の大木の如し。直立せる火柱はその幹、火光を反射せる殷紅《あんこう》なる雲の一群《ひとむら》はその木の巓《いたゞき》、谷々を流れ下る熔巖《ラワ》はその闊《ひろ》く張りたる根とやいふべき。わがこれに對する情をば、いかなる詞もて寫し出すべきか、われは神と面《おも》相向へり。神の聲は彼火坑より發して直ちに我耳に響けり。神の威力、智慧、矜恤《きようじゆつ》、愛憐は我胸に徹したり。その迅雷《じんらい》風烈を放ち出す手は、また一隻の雀をだに
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